富山鹿島町教会
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テレホンメッセージ

「聖書の人間理解」(48)

 旧約聖書創世記第6章の、「ノアの箱舟」の話を読みながら、聖書の人間理解についてお話ししています。

 神様は、人間の悪が地上に満ちているのをご覧になり、地上に大洪水を起こして、人間と、全ての生き物を滅ぼしてしまうことを決意されました。けれどもその人間たちの中で、ノアとその家族だけは、神様の特別の恵みの中に置かれました。ノアは神に従う無垢な人で、神と共に歩んだ、と語られています。神様はノアに、洪水から生き延びるために、三階建ての大きな箱舟を造ることを命じられたのです。

 ノアは神様に命じられた通りに箱舟を造りました。しかしそれはいろいろな意味で大変なことだったと思います。何もない野原の真ん中に、突然、大きな舟を造るのです。その舟が浮かぶような大洪水が起こるなどと、誰も思ってはいません。人々は箱舟を造るノアをあざ笑い、あいつは気が違ったとうわさしたことでしょう。ノアにしても、大洪水が起こるという確かな証拠を持っているわけではありません。神様がそうおっしゃった、そのみ言葉のみを頼りに、彼は黙々と箱舟を造ったのです。洪水が起こらなければ、箱舟は全くの無駄になり、彼は物笑いの種になるのです。このノアの姿に、神を信じて生きる人間の姿が描き出されています。神様のみ言葉を信じて、それによって生きる、それは、周囲の人々から見るとばかげた、無駄な、おかしなことに見えるのです。しかし実はそれこそが、この世の現実に最も即した、本当に必要なことだったのです。

 箱舟が完成すると、神様は、ノアとその家族に箱舟に入るように命じられます。また、地上の全ての生き物を一つがいずつ、あるは七つがいとなっている箇所もありますが、箱舟に連れて入るように命じられます。つまり箱舟は、ノアとその家族が救われるためのみのものではなくて、洪水によってこの世界が一旦滅ぼされた後に、もう一度、人間と動物たちが新しい世界を築いていく、そのためのものだったのです。神様は、人間の罪に対して怒り、地を滅ぼすことと同時に、もう一度新しく人間が、この世界が出直すための道を、箱舟によって備えて下さったのです。

牧師 藤 掛 順 一

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