富山鹿島町教会
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テレホンメッセージ

「救いの歴史」(44)

 創世記第37章以下の、ヨセフの物語についてお話ししています。

 兄たちによって奴隷に売られたヨセフは、不思議な導きによってエジプトの大臣になりました。飢饉のためにエジプトに食料を買いに来た兄たちに、ヨセフは自分の正体を隠したまま、弟のベニヤミンを連れて来るように命じます。そして彼らが帰途についた時、家来に命じてベニヤミンの袋に自分の銀の杯を入れさせます。そしてベニヤミンがそれを盗んだという嫌疑をかけたのです。ヨセフは彼らに、杯を盗んだ者は私の奴隷にならなければならない、他の者はそのまま帰ってよい、と命じました。かつて自分が奴隷に売られたように、今ベニヤミンが奴隷にならなければならないという事態を造り出したのです。その時、兄の一人であるユダが進み出てヨセフに懇願しました。このユダは、かつてヨセフを奴隷に売ってしまおうと言った張本人だったのです。彼は、「ベニヤミンは私たちの父にとって最愛の息子です。彼を失ったら父はもう生きていけません。どうかこの子の代わりに私を奴隷にして下さい」と願ったのです。創世記44章18節以下のユダの嘆願の言葉は長すぎてここでお読みすることができませんが、その切々たる言葉は私たちの心を打ちます。ぜひご自分でお読みいただきたいと思います。

 このユダの言葉を聞いたヨセフは、感極まって泣き出し、初めて兄たちに自分の正体を明かしました。「わたしはあなたたちがエジプトへ売った弟のヨセフです」と。ヨセフがこれまで自分の正体を隠し、そしてベニヤミンを奴隷にするというような厳しいことを言ったのは、兄たちの心を試すためだったのです。自分を奴隷に売った兄たちが、そのことを今どのように思っているのか、今度はベニヤミンが奴隷とされようとする時、彼らはどうするのかです。そしてユダの、「自分が代わりに奴隷になる」という言葉を聞いた時、ヨセフは兄たちが以前とは別の思いになっていることを、ヨセフを奴隷に売ってしまったことを心から後悔し、今度は自分を犠牲にしてもベニヤミンを助けようという気持ちになっていることを知ったのです。その時、ヨセフは兄たちを赦すことができました。正体を明かしたというのはそういうことです。もう一度、兄弟としての交わりを回復することができると確信したのです。

牧師 藤 掛 順 一
[2001年1月8日〜1月21日]

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